女子レスリングのパワハラ問題が浮上したのは今年の3月だった。週刊文春が日本レスリング協会の栄和人・強化本部長(当時)による伊調馨に練習場を提供させないなどのパワハラを行っていると報じて騒動になった。
あれやこれやで揉めているさなか、栄和人が所属していた至学館大学の谷岡郁子学長というアクの強いオバハンがしゃしゃり出てきて盛り上がったが、ひと月ほどで盛り上がりが収まった。5月に入って、日大アメフト部の悪質タックル問題が注目されるようになったからである。
世間の耳目は一気に日大に集まり、谷岡学長の自爆で批判にさらされていた至学館大学は救われた形になった。
日大アメフト部のタックル問題は、「やらなきゃ意味ないよ」の監督、ゲイビデオに出演していたコーチ、謝罪会見を紛糾させて盛り上げた元新聞記者の日大職員など、役者が揃っていたのでかなり盛り上がった。この問題をなにより盛り上げたのが、ラスボス感満載の日大の田中英寿学長である。
サッカー日本代表だったヒデこと中田英寿と字面がよく似ていて、文章で書くと紛らわしいが、相撲部出身の本人はいかにも悪そうな顔をしている。
怖いのは見た目だけでなく、山口組の6代目組長や住吉会の2代目組長と懇意にしており、週刊誌で一緒に撮影した写真が公開されるなどした。学長と大物ヤクザの付き合いを知っている職員は、誰も田中学長に逆らえなかったという。
ヤクザ同然の人間が日大というマンモス大学を運営していて、職員を恫喝しまくりだった。その学長に可愛がられていたアメフト部監督が部員に対して強権的に命令しないわけがない。実際、内田正人・前監督はいろいろパワハラをしていたらしい。
女子レスリングの栄和人などなんともないと思えることを日大のアメフト部の監督と日大学長がやっているのだから、ニュースで取り上げるネタだらけだった。
日大アメフト部の問題がそこそこ続くなか、今度はボクシング界からパワハラ問題が飛び出した。
助成金の不正流用や審判への圧力を日本ボクシング連盟の山根明会長が行っていると、連盟関係者333人が日本オリンピック委員会などに告発状を提出した。
日大アメフト部問題はそちらに移りそうな予感がする。
告発によると、山根会長はリオ五輪に出場した成松大介選手にJSCから支給された助成金240万円について、ほかの選手ふたりにも分けるよう言い出し、3等分されて3人に80万円ずつが支給されたのだという。
成松選手はおかしいと思ったが、山根会長が「自衛隊(成松選手の所属)は勝たせない」とか「代表から外す」と発言しているのを聞いたので、選手生命が絶たれることを恐れて異議を唱えることができなかったという。
五輪代表選手への助成金をピンハネしたも同然で、あまりにもめちゃくちゃである。
山根明という会長はボクシング経験者ではないが会長としてチヤホヤされており、告発状では連盟による山根会長のもてなしも糾弾していた。
ある大会の関係者に対し、連盟が会長が宿泊する部屋に用意するものとしてリストを提供しており、それには「ミネラルウォーター24本。6本は冷蔵庫へ」、「みかん1ネット、りんご(ムツ) 2~3個 高級品」「ぶどう(デラウェア) 高級品」「バナナ1房 高級品」などと書いてあったという。
実際に会長が宿泊した部屋には、ミネラルウォーター、梅酒、日本酒、麦焼酎、乾パン、森永ミルクキャラメル、カンロ飴、いかみりん、りんご、みかん、バナナが置いてあったという。
日本ボクシング連盟の会長を迎えるとなると、これほどのもてなしが必要なのだろうか。宿泊施設が勝手に用意したならまだしも、連盟から指定して用意させたわけで、これでは習近平や金正恩のような独裁者と同レベルではないか。
この山根明という会長は、日大の学長もビックリの見てくれをしている。
こちらはヤクザそのもののように見える。人前に出るのにサングラスをする人間がマトモなわけがない。
「人は見た目が9割」という認識はおおよそ正しいとは思う。実際、日大の田中学長は第三者委員会から会見を開くよう促されても「やらない」と突っぱねた。
日本ボクシング連盟の山根会長はどうするつもりなのだろうか。
いずれにしても、日大も日本ボクシング連盟も、イエスマンでトップを囲んだためにこんなことになった。
どうすれば常識のある大人に見えるか、普通の人に対してはする必要がない助言を周囲の人間ができなかった。甘やかされて育ったクソガキと同じだし、境遇としてはやはり金正恩と似ている。イエスマンに囲まれ、気に入らないヤツは消すだけ。
大学もスポーツの団体も、トップに据える人間はとりあえず見た目が普通の人間にすべきだ。ヤクザとの付き合いが外見に滲み出ているのは以ての外だし、人前でサングラスをするなど論外だ。
見た目と能力は関係ないかも知れないが、その人の人となりというのが見た目に表れるものだと常々思う。