昨晩、「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」という番組をなんとなく見ていたら、郷土玩具好きの子供が解説をしていた。東京の郷土玩具として、竹で編んだザルをかぶった犬張子を紹介していた。犬が竹を被っているのを"笑"という漢字になぞられ、笑いが絶えない家にするという縁起物であるらしい。
また、犬は安産で一度に多くの子供を産むので、安産やら子育てで縁起物として担がれているという。
とはいえ、犬が実際に安産であるかは犬種による。日本犬のように原種に近い犬は基本的に安産だが、フレンチブルドッグのような頭の大きい犬は自然分娩ができないため、帝王切開での出産になる。その時点で自然の摂理に反しているわけで、キリスト教が幅を利かせる欧米でそれでもいいのかと素朴に疑問に思ってしまう。
一部の例外を除いて犬は基本的に安産であるため、犬を多頭飼いしたついでに小遣い稼ぎで子犬を作って売ろうとし、そのままブリーダーになってしまう人が結構多いという。子犬を増やすのか簡単だからだ。ただ、素人が中途半端な形で犬の繁殖に手を出しているわけで、全部が全部うまくいくとは限らない。
また、一部の悪い業者が過剰な多頭飼育をして、劣悪な環境で飼育される犬も増えている。
その状況に待ったをかけようと動物愛護法が改正され、数値規制が設けられることになった。繁殖業者は飼育者ひとりにつき、犬15匹、猫25匹、販売業者は犬20匹、猫30匹だ。
この数値規制に対して業界から猛反撥が起こったため、来年6月から繁殖業者は犬25匹、猫30匹、販売業者は犬30匹、猫40匹の規制となり、1年ごとに5匹ずつ減らしていくことになった。数値規制の完全実施を3年先送りにした形だ。
犬を多く取り扱うなら従業員を増やしてちゃんと面倒を見ろという法律で悪くないと思うのだが、この法律によって危惧されているのが殺処分される犬や猫の増加だ。
例えば犬の例でいうと、小型犬や中型犬の寿命が15歳として、繁殖ができるのはせいぜい1歳から6歳くらいまでだ。6歳を過ぎた残りの9年間は老犬として過ごすことになる。簡単にいうと犬の生涯のうち繁殖時期は3分の1しかなく、残り3分の2は老後だ。ということは、15匹の犬がいたとすると10匹は老犬で、繁殖用は5匹だけ。
業者としては老犬が邪魔になる。となれば処分するしかない。業者が数値規制の法律に反対したのはそういう理由だ。
めちゃくちゃ自分勝手な言い分であるが、今でも繁殖犬が老犬になったことで処分されているのだから、それが加速するのは間違いない。
昔は保健所に犬を持ち込んだら受け取ってくれることが多かったが、今はそれが渋くなったうえ、2013年の動物愛護法改正で自治体が業者の犬の引き取りを拒否できるようになったため、基本的に引き取られないようになった。そこで出てきたのが引き取り屋という新しい商売である。
保健所で殺処分しなくなった繁殖用だった老犬やペットショップで売れ残った犬を格安で引き取り、こっそりとどこかで殺すか、田舎の倉庫のような場所にぶち込んで放置して餓死させる。殺さないにしても、劣悪な環境で飼育している業者もある。
間違いなく犯罪行為であるが、そういう業者が実際に存在し、利用するヤツもいる。
ところが、引き取り屋も数が減ってきたという。割りに合わない仕事だと考えられるようになってきたのかも知れない。
引き取り手がいなくなって困り果てたブリーダーのなかには、自分の手で老犬を殺すか、どこかの山林に連れていき、木にくくりつけて放置することもあるという。
保護犬の譲渡を手がけている団体があり、雑種だけでなく元は血統書付きの純血種と思われる犬の譲渡も行われている。ただ、そういう犬は老犬であることが多い。業者や個人のブリーダーに捨てられた犬と思われるが、誰かの金儲けのために利用されて捨てられた犬をなぜ第三者が面倒を見なければならないのかと思ってしまう。保護団体も引き取る人も善意でやっており、引き取り屋の元で劣悪な環境で飼われて死んでいくよりマシかも知れないが、善意の第三者がの尻拭いをしていることに理不尽さを感じる。
2年前に東京都が「動物の殺処分ゼロを達成」と大きく宣伝していたが、そういうのは単に受け取りを厳しく拒否したための結果であって、動物がほかの自治体の保健所に持ち込まれたか、引き取り屋の手に渡っただけのことが多く、保護団体の譲渡会のみでどうにかなったわけではない。ましてや、パンフレットで急に人々の意識が変わったわけでもない。単なるキレイごとだ。
保健所での動物の殺処分が減った代わりに、引き取り屋なる商売が出現し、文字どおり地獄といえる劣悪な環境で飼われたり、酷い殺され方をする動物が増えただけというのが現実だろう。
その引き取り屋も徐々に減ってきて、困った業者が自分たちでどうにかしようとしているのが今の段階だ。ここ2~3年でそれがさらに加速するかも知れない。
これは本当にどうすればいいのか悩ましい問題で、我々一般の飼い主はちゃんとしてそうなブリーダーから飼うくらいしかできない。個人なのにあまりに多く子犬を出しているブリーダーはダメで、環境がよくないペットショップも避ける。そうやって自然淘汰されていけばいいのだが、多分そうはならないだろう。
もし犬や猫がしっかりとした繁殖だけになったのだとしたら、血統書付きの犬猫の価格は今よりもっと高騰することになる。
販売されている動物の背後に悪い繁殖業者や販売業者の影がチラチラ見えて仕方がない。全体の一部ではあるが、ごく一部というわけでもない。
Instagramを眺めていると、フィードに保護犬の情報が出てくることがあるが、それを見るたびに複雑な気分になる。