厚生労働省が今日発表した情報によると、2010年3月に大学を卒業して就職した大卒就職者のうち、31%が3年後の今年3月までに退職したそうな。
前年比2.2ポイント増である。

厚生労働省の分析では、リーマンショックによる超就職難の時代の学生らで、希望する職種に就業できなかった学生が多かったことが離職率の増加に繋がったとか。
ホテルや飲食店などの「宿泊業、飲食サービス業」が51.0%で特に高く、学習塾などの「教育、学習支援業」は48.9%、クリーニングや遊園地などの「生活関連サービス業、娯楽業」は45.4%だった。

客相手のサービス業が突出して高いらしい。
一般のアホな客相手でイヤになる仕事なのかも知れないが、辞める人が多いので、新卒採用の数が増え、そこしか内定が取れなかった学生が仕方なしに就職し、すぐにやめる。この悪循環は止まらないのだろう。

私が勤める会社でも、若い社員が辞めることが多い。少し前も、私と同じ部署だった新人が3年で辞めてしまった。
そいつは、ソフトウェア開発志望で入社してきたくせに、大学でC言語をやったことがないという、とんでもない経歴の持ち主だった。大学ではJavaしかしたことがないらしい。
「そんなヤツ取るなよ」と会社の人事に文句を言いたいところだが、私が勤める会社のように、上場していても東証一部ではない三流企業にはロクな学生が集まらないのだそうな。

やっとこさC言語を覚えて、3年でなんとかドライバ開発などができる見込みが経った頃、「ウェブデザイナーになりたい」と言って会社を辞めてしまった。
ウェブ関係の仕事ほど不安定でしんどい仕事はないと思うし、それになりたいのなら、「最初からそういう仕事に就職しとけや」と思わずにはいられなかったが、ささっと辞めてしまったため、私たち先輩社員の3年間の努力は水泡に帰した。

私が勤める会社は、ほんの2年前までは社員に対してブラック企業ともいえるような仕事のさせ方をさせていた。残業ゼロ、休日出勤手当ゼロは当たり前で、2か月連続で休みなし、1か月の時間外勤務120時間でも手当ゼロなので死にたくなった。
だが、労働基準監督署の度重なる手入れで、しぶしぶ超過勤務の手当を出すようになったので、収入が一気に増えた。

将来出世できる見込みはないが、世の平均よりはやや多めに給料を貰えるだろうし、昔の体質の企業なのでリストラもない。クソみたいな職場に回されるかも知れないが、そこそこ貰って、希望とは違うかも知れないがしょぼい仕事をし続けることはできる。
そこを辞めて、ウェブデザイナーになるとは、正気の沙汰とは思えなかった。
ウェブデザイナーもそうだが、一時はやったSEやSIなどの仕事なんか、死んでもやりたくない。SEやSIはレベルが低いのが多いが、仕事は自分よりも大変そうだからだ。

自分の仕事を理解し、ほかの職種の仕事もある程度知った上で、覚悟の上で転職するのなら結構だ。しかし、経験も積まず、何も分からずに仕事を辞めてほかに移ったところで、そこも気に入らないかも知れないということは考えられているのだろうか。
しかも、そうやって「自分のやりたい仕事と違ったから」という理由で仕事を辞めるヤツは、次の仕事もすぐに辞める可能性が高いと再就職の面接で思われるのだが、そういうのも気にならないのだろうか。

世の中にあまたある転職サイトの嘘くさい売り文句に騙されているヤツも多い。「転職したら収入がアップした」、「転職でキャリアアップできた」。そんなこと、本当にあったのかどうか分からないし、あったとしてもほんの一握りの才能ある人物だけが得られることであって、「今の仕事がいやだから辞めた」というヤツには残念ながらまず当てはまらない。
殆どの転職者は、今の仕事より地位も収入も低い仕事に転がり落ちるだけ。よくて現状維持である。

超絶ブラック企業で、本当に死ぬまで働かされるというのなら別だが、イヤな仕事はどこにでもあるのだから、ちょっとくらいガマンした方がいい。
自分に合った最高の仕事が転職で見つかるなんてことは、あり得ないこととして最初から考えない方がいい。

現実は、想像するよりも遙かに厳しいのである。