フジテレビ系の「ザ・ベストハウス123」という番組は、始まった当初はなかなか興味深いもののベスト3を挙げる番組だった。「日本が誇るすごいネジ」ベスト3とかをやっていて、知的好奇心をくすぐられる内容だった。

ところが、現在のバラエティ番組に倣って、すぐに劣化した。どうでいいベスト3かベスト3ですらないものばかりが挙げられるようになった。外国の番組で放送していたすごいカップルの喧嘩だとか、マヌケな強盗ベスト3だとか、知的好奇心を1ミリもくすぐられない。
番組の内容が、その直前に日本テレビ系列でやっている「ザ!世界仰天ニュース」とほぼ同じなのだ。

同じ水曜日に放送している「ザ!世界仰天ニュース」と今の「ザ・ベストハウス123」は、もはや全く同じ内容だと言って過言ではないが、どちらも実にくだらない内容で、見るに値しない。チャンネルをザッピングしているときに、チラリと見てしまう程度だ。

どちらの番組でもよくやっているのが、珍しい病気や先天的な障碍、或いは悲劇的な事故でとんでもない容姿になってしまった人間の特集である。
それに加えて、昨日フジテレビ系で放送されていた「サイエンスミステリー」などの特番でもよく取り上げられる。

違法な美容整形や自分で勝手に薬物を注射して、顔面がただれたりふくらんだりした韓国の扇風機おばさんを始め、足だけが異常にでかくなるオバハンとか、頭がくっついた畸形の子供とか、若いのにババアみたいな見てくれになった女などである。

私は常々、この手の番組は何のために放送されているのか疑問だった。どう考えても、見せ物小屋的な発送で、そのような人たちを視聴者の好奇の目に晒しているだけにしか見えないのだ。

番組の作り手としては、それを察知されないように、そんな人たちが頑張って闘病していると訴え、あくまでも人々に感動を与えるVTRにしようとしているのだろうが、見ている視聴者で、「あの人たちも頑張っているのだから、私も頑張ろう」などと思う人がいるのだろうか。
私だって人の子だから、「気の毒に」とは思うが、それだけである。大抵は、小学校の感想文で書いたら、教師に叱られるようなことしか思わない。扇風機おばさんを見たら「気持ちワリー」と思うし、昨日のテレビでやっていた頭がくっついた畸形の双子は、親が子供を堕ろさなかったことを自慢げに話していたことに対して、「宗教上の理由ちゃうんか」と言ったし、畸形の双子は将来どうやって生きていくつもりなのかだけが気になった。

ハッキリ言ってこういう番組は、偽善に満ちた悪意の塊でしかない。それっぽい理由を付けて感動的な話をスパイスとして味付けしただけの、見せ物だ。
あれを視聴者に見せて、テレビは何を視聴者に訴えかけているのか。私には、「ホラ、こんな気の毒な人もいるんですよ」と、テレビ局が面白がって紹介しているだけにしか見えないのだ。
これは、人間の差別意識を利用したものでしかないと思う。

社会のヒエラルキーというものを構成した人間は、必然的に自分より下のものを探そうとする。自分より下に見られる人間を探し出し、自分の地位を相対的に高めるという差別意識を持つのが人間である。
だから、「あいつには障碍があるが俺にはない」、「あいつは収入が低いが俺はそれよりはマシ」、「あいつは顔がブサイクすぎるから俺の方がマシ」などという、他人との比較を日常的に行ってしまうのだ。

それは人間の本質だから仕方がない。人間は他人と比べることによって、自分のアイデンティティを確立するのである。
それを巧みに利用したのが、「ザ!世界仰天ニュース」や「ザ・ベストハウス123」、「サイエンスミステリー」といった番組ではなかろうか。

私は、そういう人間の本質的な差別意識を多分に持つ人間だが、その手の番組は一切見たくない。自分にとって、何のプラスにもならないからだ。
こういう考え方をすることは、私が人より歪んだ考え方を持っていて、悪い方にしか捉えられないからだろうか。
少なくとも、自分ではそうではないと思う。