何年か前、横浜市にあるドイツ企業に行ったとき、その会社の自社ビルのエントランスを抜けたところにでかでかと写真パネルが掲示してあった。
ドイツの大統領が表敬訪問したときの写真だった。

そのドイツ企業に勤める社員が「この前、ドイツの大統領が来たんですよ」と言っていたのだが、ドイツの大統領なんて誰か知らんし、そもそもいたことも知らなかった。ドイツは共和国だが議院内閣制であり、行政で一番エライのは首相だろう。
「コール首相」、「シュレーダー首相」、「メルケル首相」なんかはよく耳にするが、「ケーラー大統領」なんて聞いたことがない。
実際、ドイツの大統領は行政の長でもなんでもなく、儀礼的、お飾り的存在であるらしい。

ドイツのほか、議院内閣制の国にいる大統領は、皆が象徴的な存在の大統領で、イタリアやイスラエルなどもそうらしい。
首相がいて、大統領がいる国は、首相の方がエライのだ。

だが、フランスやロシアは、大統領と首相がそれぞれそれなりに権力を持っていて、大統領には首相よりやや強い権限がある。
だから、フランスやロシアでは、大統領の方がエライということになる。エライというか、強いというべきか。

ただまあ何にせよ、大統領がいようが首相がいようが、民主国家なら大統領制でも議員内閣制でもいいと思うのだが、ロシアはそれに当てはまらないように思える。
この国は元々共産主義の親玉国家であり、偽りの民主国家だ。だから、プーチンみたいな野郎がずっと権力を保持できるのだろう。

プーチンはロシアの大統領を2期務めたあと、自分の子分であるメドベージェフを大統領にして、自分はひとつ下の首相になった。
その間、メドベージェフは次の大統領から任期を4年から6年にするよう法改正を行った。ロシアの大統領は3期連続ではできないが、1期飛ばせばまた大統領になれる。メドベージェフの任期切れのあと、プーチンが大統領に返り咲き、メドベージェフが首相の座に退く。プーチンは、今度は2期12年大統領でいるつもりだ。
これを茶番という。

ゴルバチョフは、次またプーチンが大統領になれば、ロシアにとって次の6年が「失われた6年になる」と主張していた。実際は「失われた12年」になるだろう。

プーチンが当選しなかったらよさそうなもんだが、対抗の候補者が出る見込みはなく、次の大統領選はプーチンの信任投票になると予想されている。
なんせロシアは、石油成金の大富豪が政権批判をしただけで、脱税やら何やら降って湧いたような犯罪で逮捕され、何年も牢屋にぶち込まれる国だ。ロシアに不利なことを他国で吹聴する人間は、スパイに殺されたりもする。
恐ろしくて、誰もプーチンに逆らえないから、次の大統領の候補者なんて出るわけがない。だから、プーチンは当選確実だ。

プーチンは、ホモビデオの役者のように、裸で狩りをして、トラを退治したとかアピールするハゲマッチョだ。やりたいことは何でもやるジャイアンタイプである。
石油や天然ガスの開発プロジェクトである「サハリン2」では、日本企業に多額の投資をさせておきながら、環境問題があったとか何とか言って難癖を付け、外国企業の取り分を強引に減らしたことがあった。
難癖付けて何でもやる姿は、中国の国家主席と同じである。

日本は、中国、韓国、北朝鮮に加え、ロシアというクソみたいな国に四方を塞がれている。
先が思いやられるというものだ。