社会人になって、会社で製品開発というもの作りをして、仕事の難しさを知った。
仕事をやる上で、納期厳守と客先対応というのが一番難しい。

開発という仕事をする以上、常に納期に縛られ、それに振り回される。それだけならまだいいが、作った製品でトラブルが起き、そのトラブル対応に追われるのは心底ウンザリする。
自分が悪いといえば悪いのだが、実際は「オレは悪くない」と言いたいことが多い。

そういうことをいろいろ経験してきたから、よその企業でいろんなトラブルがあったとしても、自分に置き換えることで理解できるし、「まあ、しゃーないか」と思えることが多くなった。

例えば、震災後に起きたみずほ銀行のトラブルがある。数日にわたって振り込みや引き落としができず、えらい迷惑を被った人が大勢いた。私自身も、会社の旅費精算口座から金を引き出せないまま、急な出張に行くことになって、出張中に金に困ったことがあった。

トラブルの原因は、解説した義捐金専用口座を、振り込みがたくさんあるときは特別な設定にしないといけなかったのに、通常の口座と同じにしてしまったため、振り込みが多数重なって、システム全体がめちゃくちゃになったというものだった。

これは、義捐金用口座の設定を間違えたヒューマンエラーが原因であるが、そのように設定できてしまうシステムにも問題があるだろうし、通常口座でも振り込みが重なっても設定が切り替わるなどして、問題が起きないようなシステムになっていなかったことも問題だろう。

「それを想定していなかったのが悪い」などと軽く言って、バッシングするヤツがいるが、そんなもんはトラブルが起こってからは幾らでも言えることであり、ただの結果論でしかない。
トラブルが起きたら、尻をぬぐった上で、同じ過ちを繰り返さぬよう、再発防止策を練って実行すればいいのである。

同じことが東電にも言える。

今日の株主総会で、東電は株主から叩かれまくった。元々2000円で持っていた株主がキレて怒っているのならまだ分かるが、株主総会に参加するために200円になってから買った連中にも叩かれまくった。

確かに東電の対応にはかなり問題があったかも知れないが、原発事故について東電にだけ責任を負わせるのは、なんかオカシイような気がしてならない。
IAEAから電源確保について問題があると指摘があったのに東電は無視していたわけだが、それでも原発における国の基準は満たしていたのである。何か誤魔化して基準を無理矢理パスしていたのなら問題だが、ちゃんと国の基準をパスしていて、問題が起こったのだから、それは国の基準に問題があったとしか思えない。

だとしたら、これまでその基準で放置してきた、自民党や民主党などの政権にも責任の一端があるし、所轄の経済産業省やら原子力安全・保安院やらにも問題がある。

ここで東電を庇うとおかしく思われるかも知れないが、東電は国の基準を守っていたことは忘れてはいけない。
それで事故が起きて、その結果だけを責められたら、私が担当だったとしたら、「オレに言うなよ」と思うに決まっている。とんでもない結果になったことは申し訳ないと思うだろうが、基準を守っていたにも関わらず、「想定しなかった」という結果論で責められても、「知らんがな」と思ってしまうだろう。

その上、会社の経営があと一歩で倒れるというところまで傾いて、自分のお先は真っ暗である。
そんな状況で、トラブル対応するわけであるから、ヤケクソになって逆ギレしてもおかしくない状況である。
それを思うと、まだ頑張っている方だと思えて仕方がない。

どんなトラブルでも、トラブルを責める方が一方的に強く、トラブルを出した企業側はひたすら堪え忍び、トラブル回避向けた動きをするのみである。
東電は、むちゃくちゃ叩かれても仕方のない状況であるわけだし、これまでの日本の企業であり得なかった空前絶後の大トラブルを出したわけだが、ここは何とか踏ん張って貰いたいと思う。