2003年のイラク戦争の前、イラクのフセイン大統領がアメリカのブッシュ大統領に、「大量破壊兵器がない証拠を出せ」と因縁を付けられた。イラク側は「ない」と回答したのだが、アメリカは「そんなことあるわけない」と主張し、問答無用でイラクに戦争を仕掛けた。

実際、イラク制圧後にアメリカがイラク中を探しまくったのだが、結局、大量破壊兵器自体見つからず、かつて存在したという証拠すら見つけられなかった。

アメリカがイラクにただ因縁を付け、ボコボコにしただけの戦争が、イラク戦争だ。

そもそも、アメリカの因縁の付け方がムチャクチャであった。「大量破壊壁が存在しない証拠を出せ」という否定の証明をイラクに求めたのである。
数学でもない限り、否定の証明なんぞできるわけがない。イラク中を開けっぴろげにしたところで、結局はアメリカに「どこかに隠しているんだろう」と言われて戦争を仕掛けられるだけである。

身近なことで考えると、どれだけムチャであるか分かりやすい。

例えば、嫁さんや恋人に「浮気してない証拠出しなさいよ」などと言われても、"浮気をしていない証拠"なんか出せるわけがない。自分の毎日の行動を相手に示したところで、それを頭ごなしに「ウソ」と言われたり、「してるに決まっている」などと逆上されたら終わりだ。
女には理屈が通じないのである。

相手が否定の証明を求めてくるのであれば、逆にこちらから、それがあるという証拠を出せと言ってやればいい。前述の女の場合は、「俺が浮気しているという証拠をお前が出せ」と言えばいいのだ。

「○○でない証拠を出せ」と言っているヤツは、大抵がアホか、アメリカみたいに相手に因縁を吹っ掛けたいチンピラである。

たまに仕事上の客で、製品や中のソフトウェアに関して、「問題ないことを証明しろ」とか言ってくるヤツがいる。どうしようもない低能の薄らバカである。
だが、客に「あなたはどうしようもないバカですね」とは言えないので、「問題が全くないとは言い切れませんが、これだけ検証をしています」とか言って検証リストを提示したり、「万が一問題があった場合は、ただちに原因を究明し、修正するようにします」などと言うのだ。
どんなバカな客でも、それで一応納得する。それでも納得しないほどのバカなら、それ以上客として相手にできない。

それと同じようなバカをやっているのが、橋下徹・大阪府知事である。

彼は震災後、急に「原発をなくせ」と息巻いているわけだが、九電の玄海原発の再稼働を佐賀県知事が容認するような姿勢を見せたところ、猛烈にかみついた。
「原発が安全であるというデータはない。知事は霊感でも持っているのか」

橋下府知事は、データデータと言ってロジカルシンキング(論理的思考)をしているかのように装っているが、実際はそうではない。
また、「安全である証拠を出せ」というのは、否定の証明になっていないように見えるが、実際には、安全を示すには問題や危険がないことを示す必要があり、結局は「原発に問題がないことを証明しろ」と言っているのと同じだ。

そんなもん出せないに決まっている。実際、「どんな災害があっても絶対安全」などと言い切れるわけがない。言い切れないと分かっていて、原発推進派に無理問答を押し付けているのである。

さらに橋下府知事がダメなのは、関電の15%節電要請に未だにデータデータともっともらしいことを言った上に、「電力不足が7%なのに、15%の節電要請はオカシイ」などと主張している。
オカシイのは自分の考え方である。

橋下府知事はマージンという言葉をご存じないのかも知れないが、電力が7%足りないときに、10%の節電が行われたとしても、余裕度は3%分しかない。
電力の使用率が95%を超えると、いつ停電が起きてもおかしくない危険水域になる。急に暑くなって一気に電力消費量が上がるかも知れないからだ。
だから、7%足りないのに10%の節電要請というのはどう考えてもあり得ない。

また、もしギリギリでいくとしても、10%の節電要請では、実際に皆が10%の節電を行うとは限らないわけで、余裕を見て大目に要請するのは当然のことだ。15%の要請で、実質的に10%だったら、何とかギリギリ電力が供給できるかも知れない。
それが普通だろう。

システムのスペックにマージンを持たずに設計するのは、中国人のようないい加減な連中のすることで、常識ある社会人ならば、常にマージンを確保するのが当然だ。
消費電力が10Wの機器には15WのACアダプタを使い、5VDCの電源周りには耐電圧16Vや25VDCのコンデンサを使う。これが日本人の設計思想である。

橋下府知事は、論理的思考ができているように装いながら、実際は何もできていない御仁である。
国旗掲揚とか国歌斉唱みたいな数字に関係ない思想の分野なら感情論だけで、激情しながら政策を推し進めればいいが、数字と論理的思考が必要な電力消費に関して、アホ丸出しの姿で口を挟んでいる場合ではなかろうに。