少し前、嫁さんと犬を連れてペットイベントに行ってきた。その会場で来場者の目をひときわ引いた犬がいた。
アフガンハウンドである。

アフガンハウンドはA4用紙を二つ折りにして立てたような細い体型で、毛が長く、頭の毛なんかは女の髪の毛のようになっている。
いかにもお高そうな感じがして、我が家の柴犬の素朴さと比べると、気品で言うと天と地くらいの差がある。車で例えると、柴犬が軽トラック、アフガンハウンドがフェラーリみたいな感じか。
もちろん、可愛さでは柴犬の方が上だが。

そのアフガンハウンドは、皆に見られていい気になっているようなモデルのような雰囲気で、いかにも調子に乗ってるって感じだった。頭から垂れ差がる髪の毛のような毛は、痛まないようにマフラーみたいなもんに納められていた。ショー以外ではそうやっているんだろう。

アフガンハウンドは見た目が立派だから賢そうに思えるが、実際はあまり頭はよくなくて、プライドだけは一人前。何でもかんでも言うことをきくタイプの犬では決してない。そこらへんだけは柴犬とよく似ている。
だから、アフガンハウンドを飼うのは、お金がかかって大変なほか、躾も大変になる。

嫁さんとそのアフガンハウンドをマヌケ面しながら見ていたのだが、アフガンハウンドでひとつ思い出した話があったので嫁さんにした。「種の起源」などで知られるチャールズ・ダーウィンが、飼っていたアフガンハウンドを射殺したという話だ。

イギリス人のダーウィンは、「種の起源」で「犬の人間への親愛の情が、本能的となっていることは疑いようがない」とか何とか能書きを垂れていたが、その逆に、人間が犬への親愛の情なんか持っていないということを証明して見せた。

ダーウィンはイギリス原産のテリアだけを愛し、自分が飼っていたテリアが主人公の冒険小説を書くなどし、その溺愛ぶりを人に見せつけていた。
ダーウィンはそのテリアと同時に、知人から譲り受けたアフガンハウンドも飼っていた。構って欲しいとねだってばかりのテリアに対し、アフガンハウンドはその性格から非常に静かでおとなしかった。

ダーウィンはそれが気に入らなかった。反応の乏しいアフガンハウンドを見てイライラを募らせ、しまいには我慢しきれなくなり、自宅裏に連れ出して、猟銃で頭を吹き飛ばして殺してしまった。

可哀想に、そのアフガンハウンドはダーウィンに飼われなかったら、射殺されることなんかなかったはずだ。
キチガイみたいな飼い主に飼われると、哀れな末路を迎えるといういい例だろう。

まあ、もっとも、ダーウィンが生きていた頃には、イギリスには動物愛護の精神なんぞこれっぽっちもなかったから、気に入られなかった犬が殺されたというのは、ごく普通の話だったかも知れないが。