元代議士の山本譲司氏による「獄窓記」(新潮文庫、780円)は、刑務所の内情を綴ったドキュメンタリーものとしては、かなり面白く興味深く読むことができた本だ。
「獄窓記」は、山本氏が菅直人の秘書から始まり、秘書給与詐取を行い、その罪で1年6月の実刑判決を受けて服役して、刑務所で433日過ごして出獄するまでの話を綴っている。

これまでの刑務所もののドキュメンタリー本は、いかにも悪そうなヤツが書いていて、何の感情移入もできなかったが、「獄窓記」は、ごくマジメで普通の感覚を持った人間が刑務所の実情を書いていて、感情移入がしやすい。「自分だったらどうか」と常に考えることができるのだ。

著者は、刑務所内の仕事として、障碍者が働く工場の補助が与えられる。刑務所にいる意味があるのか疑問に思うほどの前後不覚の同囚の世話をするのである。身体障碍者はまだいいが、精神に異常を期待している囚人や痴呆老人は酷いもので、垂れ流しになっている汚物の掃除をしなければならなず、風呂やトイレでの介助もしなければならない。

山本氏は議員時代の経験から福祉に明るく、また興味も持っていたので、仕事にやりがいを感じ、積極的に同囚の世話をしていたが、なかなかできることではない。

また、「獄窓記」では、一般人が知らないような刑務所の決まりや実情を多く知ることができる。囚人は4級から1級まで階級で分けられていて、級が上がるごとに面会の回数や手紙を出せる回数が増える。
刑務官は、意外と囚人たちのことを思いやる気持ちを持った人が多い。

「獄窓記」は知らなかった刑務所のことをたくさん知ることができ、最後まで興味を持って読むことができたのだが、刑務所以外でも興味深い事柄が幾つか書いてあった。
民主党における山本譲司氏の先輩議員であった菅直人と江田五月の両議員のことだ。

菅直人は、日本人拉致の実行犯である辛光洙の釈放を韓国に要望する署名を行ったり、自身に跳ね返ってきた年金未納問題を受けてお遍路さんの格好で四国八十八カ所巡りをしたり、ろくなことをやっておらず、いいイメージなど全くなかった。
しかし、「獄窓記」の中では、かつて自分の秘書であった山本氏のことを思いやり、同じ秘書給与詐取で追求された辻本清美が、「カツラなどに私的流用した山本議員とは違う」と事実無根の言い訳を繰り返していたことに、テレビの討論番組で必死に反論するなどしている。

「イラ菅」などと揶揄されるが、菅直人は人間としてはいいヤツなのかも知れない。ただ、政治的な思想が多少ひん曲がっているだけなんだろう。

「獄窓記」を読んだおかげで、菅直人や江田五月へのイメージが少し変わってしまった。
「根はいいヤツだけど、思想がおかしいだけ」
そんな風に思えてしまう。
まあ、大抵の政治家はそんなもんなのかも知れない。

逆に、「根が悪いヤツで、思想もおかしい」という国会議員はいるのだろうか。
小沢一郎などは見た目も性格も思想も悪そうだが、実際はどうなんだろう。