0128-1

昨年の12月20日、大阪ガスが290億円もの特別損失を計上すると発表した。アメリカ・テキサス州で進めていたシェールガス田の開発で予定通りの生産ができないと判断されたため、その損失分を計上した。
大阪ガスはテキサス州の鉱区開発に330億円も投資したが、完全なる失敗で、投資のほぼを失うことになった。

その2か月前には、ロイヤル・ダッチ・シェルが240億ドルもの投資を行ったシェールガス事業も失敗すると見られる観測が広がっており、シェールガスやシェールオイルの事業が簡単なものではないと知らしめることになった。

これまで採掘できなかった地中の岩盤の間にあるガスであるシェールガスの採掘を可能にした技術は、21世紀のエネルギー革命ともてはやされていたが、そのシェールガスの先行きが怪しくなってきている。
採掘を見込んで大金を投資した企業が、結果的に不良鉱区を掴まされることになって大損するというリスクだけでなく、シェールガスやシェールオイルが安価だということが神話であると徐々に認識されつつあるからだ。

シェールガス革命が起き、採掘がある程度コストダウンすると、それがまるでゴールドラッシュであるかのように宣伝されるようになり、投資ブームが起きた。過剰投資による過剰な開発によって、シェールガスの価格が一気に下がることになるが、実際はシェールガスの採掘コストが下がったとはいえ、それでも安いものではないらしい。
しかも、開発で大スベリする可能性をはらんでおり、開発リスクは非常に高い。

さらには、採掘量が想定よりも多くなく、開発費用の元が取れない事業も多くなっているそうだ。
シェールガスやシェールオイルは、割に合わないエネルギー開発事業だと認識されるようになってきており、投資や新規開発の減少により、価格が上がるのは間違いないと見られる。

これは、日本としてかなりショックな事実である。
アメリカからシェールガスを輸入できるようにして、エネルギー不足を補おうとしていたのに、その算段が崩れつつある。

「原発を動かしてはならない」と寝言を言うヤツが多すぎるおかげで、原発が再稼働させられない状況において、原発に代わる発電は火力発電しかない。
太陽光などの再生可能エネルギーは全体から見れば微々たるものであり、しかも供給元としては実に不安定であるので、アテにすることなどできない。そうなると、火力発電しかアテにできる発電方法がないのは間違いない。

火力発電所の新規建設などの問題もあるが、それ以上に火力発電所で使う燃料費が問題だ。現在で年間3兆円を使っており、シェールガスによってそれがもう少し下がるかと見られていたが、その期待は消え去ったと言って過言ではない。

火力発電のエネルギー供給が心許ないとなると、原発の代替エネルギーなんかないに等しい。
先日もこのブログで書いたが、「原発がなくてもエネルギーは足りてるじゃないか」という意見は、東京電力管内で通じる話であって、関西電力管内は絶対的に足りていない。
反原発派は「日本のことを考えて、原発の再稼働を認めない」と主張する割に、東京のことしか見えていないように思える。
死んでも原発再稼働がムリというのであれば、何か原発に代わる代替エネルギーを提案して貰いたいものだが、マトモなものが何も出てこない。

出てくるのは、「節電する」ことによって電力需要を少なくすることや、「太陽光発電をもっと普及させる」という非現実的なことばかり。
誰ひとり、原発に代わるエネルギーを提案できない。
小泉元首相に至っては、代替エネルギー案を出していないという批判について、「私ひとりで代案を出せと言うのは無責任。代案は出さない」と演説で述べたそうな。

ここまで来るとめちゃくちゃである。目標だけがあって、それを達成する方法がないのである。反原発を掲げれば、誰かが代替エネルギーを考えてくれるだろうという考えなのだが、酷すぎる話だ。
目標を掲げるだけなら誰だってできる。その方法を考えるのが難しい。アホな経営者は、何の根拠もなく「売上を倍にする」などと宣言したりする。「営業が頑張る」などといった根性論で、売上をどうにかできると考えているフシがある。
反原発もそれと同じ。「根性で何とかなる」。根性でどうにかなるのなら、とっくにどうにかなっていてもよさそうなもんだが。

民主党が「子供手当を2万6000円支給する」とか「高速道路を無料にする」と吹聴したとき、「その財源は霞ヶ関埋蔵金である」などと主張していた。
結局、霞ヶ関の埋蔵金なんか殆ど出てこず、子供手当も高速無料もただの詐欺で終わった。
それでも、ウソでも何でも、方法を提示しただけ民主党の方が小泉元首相よりマシかも知れない。
小泉元首相が言っていることは、「子供手当を倍にします。財源はありません。カネはどこかから沸いてくるでしょう」と言っているのと何も変わらない。

こんなめちゃくちゃな主張に、拍手喝采で応えるアホな聴衆が多いことにショックを覚える。
別に原発ゼロの案自体は真っ向からは否定しない。ただし、エネルギーに関する何かいい代案があるならばの話だ。
代案もなく社会の根幹を揺るがすような無責任なことを言うようなヤツは、アホな経営者と同様に死んだ方がいいと思う。「誰か何とかしろ」と言うだけなら、誰だってできるではないか。

世の中、何よりも根拠が必要である。根拠もなく適当にヘラヘラしているヤツは、ただ単に周りをめちゃくちゃにしたいだけに思えて仕方がない。
小泉元首相が、それの代表だ。